ナザレのイエスのことば J・マシューズ

 
J・マシューズが昨年出した2冊については前に記事を書いたが (不遇な本、嬉しい展開)、今年になってまた彼女は本を出した。

Universal Radiance: Illuminating the Sayings of Jesus of Nazareth (Amazon)

イエス・キリストの言葉とされているものが主題だ。後世になってから加えられたものは区別すると本の説明に書いてある。神学を大学と大学院で学んだせいなのか、そのあたりは厳しい感じ。この二ヶ月ほど次々と書かれているブログの文章も収められていて、どの章も短いけれども、すごく力がある。

僕自身は、いま翻訳をしている本を除けば非二元とかスピリチュアルの書きものに触れることはほぼなくなっている。でもJ・マシューズのだけは例外で、ブログも毎回楽しみに読んでいる。迷いのない彼女の言葉は、ときにあまりにもとっかかりがないようにも思えるし、革命的すぎてついていけない部分もあるのだが、世界に今すでにあるものをストレートに示す力が大きい。逆らうのが本当に難しい。あっちこっちに概念を飛ばして見なかったことにするいつもの逃げ方が通用しない。

1行ごとの字面だけを眺めると、そんなにすごいことが書いてあるような気もしないのだが、それだけにこの鋭さと輝きは不思議だ。個人は存在しないとか、自我は概念だとか、そういう表現から抜け落ちていたものが沢山あったことにも気づく。

いわゆる「非二元」への没頭は、じつは非二元の現実に対する巧妙な抵抗だったのではないか。神のみがあるという現実に駄々っ子のように抵抗していただけではないだろうか。そんなふうにも思えてくる。

【おまけその1】一ヶ月か二ヶ月ほど前に知ったアリス・コルトレーン。ジョン・コルトレーンの奥さんだったジャズ・ミュージシャン (2007年没)。アルバムのタイトルがぶっ飛んでいてすごい。Journey in Satchidananda (1970)、Universal Consciousness (1972)、World Galaxy (1972)、Reflection on Creation and Space (1973)、Eternity (1975)、Radha-Krisna Nama Sankirtana (1976)とか。Turiya And Ramakrishnaなんていう曲もある。ハープが前面に出たりしているジャズだが、Journey in Satchidanandaは馬鹿みたいに繰り返し聴いてしまった。

【おまけその2】絵描きの熊谷隼人さんのTwitterで知ったBill EvansのThe Solo Sessions。とてもいい。何度も聴いてしまう。それとFrom Left to Rightも好きで、これもリピート中。